虚仮威しのグラフィックもなければ、ソーシャル要素という名のプレイヤーに不便を強いるだけのまやかしもない。
あるのは、ただひたすらに真摯で正直なゲームプレイだけ。
2010年度のIndiecadeでMost Fun/Compelling Gameを受賞したこの作品は、文字通り多くのゲーマーたちを笑顔にし、たちまちの内に虜にしてしまう魅力が満載だ。
ゲームの舞台となるのは我々が住む世界とは別の次元。宇宙航行中に原因不明のアクシデントに見舞われた宇宙船クルーたちはテレポーターを使用して脱出を試みる。無事に脱出は成功するものの、謎の次元干渉を受けたためにテレポーターが誤動作を起こし、クルーメンバーはバラバラになってしまう。
プレイヤーはクルーキャプテンとなり、散々となったメンバーを発見、救助し、次元の干渉の原因を突き止めるために奔走することになる。
ゲームジャンルは2Dプラットフォーマーだが、通常あって然るべきであるジャンプが存在しない。その代わりに用意されているのが重力のスイッチ(切替)だ。これは床(または天井)に足が着いている限り任意のタイミングで発動させることができ、一見すると進むのが不可能と思える通路や障害を打破するために頻繁に使用することになる。このゲームのキーフィーチャーだ。
そのアイデア自体は目新しいものではないが、巧妙に練り込まれたレベルデザインが、一画面スクロールさせるごとにプレイヤーに挑戦状を叩きつける。
時には指先のテクニックを、時には機転を、そして何より“折れない心”を要求してくるゲームプレイは、往年のゲーマーたちの感涙を呼ぶこと必定である。
グラフィックスタイルはレトロな風合いではあるが、Commodore64のテイストを踏襲したものなので多くの日本人にとってはそれほど郷愁を誘うものではない。しかし、ゲームを彩るチップチューンサウンドは実に見事なもので、ファミコン世代の人間であれば遺伝子が震えるのを感じること請け合い。
懸案の操作性だが、十分に及第点を与えることができる。当然ながらハードウェアコントローラ(ゲームパッド)と比較すれば大きく劣ると言わざるを得ないが、三種類用意された操作スタイルはそれぞれ調整も行き届いており、ほぼ問題なくプレイ可能である。
リニアなアクションのテクニカルな楽しさと探索系アクションのワクワク感を高次元で融合させた本作は、2Dプラットフォーマーのファンならば絶対に素通りしてはいけない。
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